ライブ帝国 ムーンライダーズ

およそ2ヶ月前発売のDVDを発売一週間後にamazon買いし、今頃封を切って観てみる。既にこれはファンとは呼ばないような気がします…。ムーンライダーズの過去の映像を観ました。

『ライブ帝国 ムーンライダーズ ムーンライダーズ ASIN:B0001U1LMK

時は1993年、アルバム『A.O.R.』*1の頃のライヴ映像で、TVで放送されたものらしい。この頃についてはファンの間でも評価が分かれるところ。ボクはこの前作『最後の晩餐』*2で初めてムーンライダーズを聴いて、ワクワクしながら初めて発売日に買ったライダーズのアルバムだったと思う。当時『A.O.R.』というタイトルに困惑したが、ライダーズらしくほんのりと薄暗く、ライダース史上最もわかりやすくポップで、打ち込み中心の薄味なサウンドは嫌いではなかったし、「ダイナマイトとクールガイ」はなぜだかライヴで歌って(当時アコギ弾き語り)、ライダーズを知らない客層に妙に受けた記憶がある。アルバムは鈴木慶一氏をメイン・ヴォーカルに据えて、岡田徹白井良明と言うバンドブームの裏立役者両名をプロデューサーとして、メンバー全員参加にこだわらずに、実質3人で作り上げた感のあるものだったと記憶する。

さておきライヴである。
慶一さんは耳の不安が大きい時期だったと思うのだけれど、時々右耳を押さえて不安そうな顔をしている様子も見受けられるが、終始ハイテンション。声ののびは悪くないし、メリスマティックなアドリブもこの前後のソロ展開を考えると「らしさ」満点。さらに白髪化もまだ完了しておらず、ちょっと若い。良明さんももちろんハイテンションで、良明トーンで弾きまくってあおりまくって場を引っ張っている。なんて言うかとても脂っこい。岡田さんはバブリーなシンセ音で、なんか録音作品とは違う80年代っぽい世界観を作り出している感じ。ウーン、こんなんだったっけ?
対して黙々とリズムを刻むかしぶち哲朗さんは正面からのアップがほぼ無し、後からヘッドフォンをかけている様子が見て取れる。終始クリックを聴きながら、時にはほとんどのパートを打ち込みに任せて、ハットとバスドラに徹していたりする。印象薄。プロデューサー組に対して唯一気を吐くのはくじらさんこと武川雅寛フィドルにペット、ブルースハープ、旗(?)、そして何よりも慶一さんの裏に表に回っての歌は素晴らしいっす。いつもライヴを観ていて思うのは、この人は本当にステージ映えするなぁと言うこと、多分バンドで一番ステージ向きな人なのかも。鈴木博文さんは書生さんのような(失礼)様子で淡々とリズムを置いていく。この人のレゲエ系の間は本当に絶妙で、大好きっす。が、曲の構成を忘れているのか、元々覚えていないのか、コード展開の変わり目やキメで頭抜け/音外しすることの多いこと…。出だしアップのところでミスるのもどうかと(と言うかそんな編集もどうかと)。「レンガの男」演奏中のシーケンスフレーズの刻み方が、異常に肉体的かつ空間恐怖症的な良明さんと、間の素晴らしい博文さんと言った感じで好対照をなしていました。自曲でここまでハイテンションにみんながはじけているのにやっぱり書生さんのようでした、本人は『処方箋』*3や『三文楽士』*4で独自のヒリヒリした路線を確立して、のっていた時期だけに、なんか一歩引いた感じに見えるのはうがちすぎ??

あー、悪口みたいにいっぱい書きましたが、突っ込みも入れつつ非常に楽しめます。特にこのバンドは「日本一ユニゾンの素晴らしい男達」として認定しても良いくらい(全員で歌っていなくても)図太いユニゾンをかまします。ただ、打ち込みにいろんなことを任せすぎて、バンドの一体感はちょっと薄味っす。このあとの肉体性の復権を知っているだけに。面白い映像だと思いました。

*1:A.O.R. 『A.O.R.』 ムーンライダーズ

*2:最後の晩餐 『最後の晩餐』 ムーンライダーズ 1991年発売の5年ぶりの復活作、コンセプティヴかつ重厚な作品で、ここからファンになった人も多いと聞く

*3:ASIN:B00005JYPK:image:small 『処方箋』 鈴木博文 1992年

*4:ASIN:B00005JYPL:image:small 『三文楽士』 鈴木博文 1993年